
いや人はね、いつだって自分が大変だなんて顔して生きてるもんすよ。
私はこんなに忙しいとか、
何で彼はあんな人間なのにあたしより友達が多いんだとか、
こんなに努力してんのに何でダメなんだとか。
いや別にね、この地球上のどこかにある悲劇を放っておいていいんですか、
とかそういう感じじゃないんすよ。
俺だって世界に対して何かしようとは思わないですし。
あ、こういう言葉ありますよ。
人が人のことで悩むことはない。いつだって人は自分のことで悩んでいる。
俺が好きな小説に書いてありました。こういう人は多いすよね。
いや話が大分それてますけどね。
世界史の授業で先生はこの前ギリシャいってきてさぁ・・って自慢する教師のように話がそれてますがね。
いや要はね、どんな逆境でも意外にどうにかなるもんなんじゃないすかってことですよ。
動物や植物は自分が一番大変だなんて夢にも思ってないですよ。
たとえばオーストラリアのバンクシアって植物があるじゃないすか。
オーストラリアって乾燥してて山火事多いすよね。
そのバンクシアって植物は山火事によってその硬い種が開いて、
火事がおさまると発芽するんすよ。
いや普通なら山火事なんて植物は燃やされちゃうだけじゃないすか。
でも変わり者のバンクシア君はそこを利用したんすねぇ。
いやぁ花マルですね。花まるマーケットですよ。
うんそう、たとえばコアラですよ。
あいつらユーカリ食べますよね?
ユーカリって毒あんすよね。
ではなぜコアラが毒のあるユーカリを食べるかですよ。
それは彼らが弱いからですよ。
コアラを思い出してくださいよ。
樹上生活をしてるくせに、猿のように俊敏でもゴリラのように大きくもないですよね。
彼らは進化の途上で生存競争に負けそうになったんすよ。
他の動物との食料の奪い合いに敗北のふた文字がちらちらしてたんすよ。
そこでコアラさんは思いつきました。
毒のあるユーカリなら誰とも争わないで食べれるジャンと。
でもユーカリって毒あるし栄養があんまないんすよ。
だからコアラは一日20時間も寝て過ごすんすねぇ。
コアラは偉いすよ。どっかの若者みたいにあれも欲しいこれも欲しいとは言わないすもん。
何が大事か分かっていれば、あきらめなきゃいけないもんも見えてきますよね。
まぁ要はね、俺はオーストラリアが好きってことですよ。
誰か僕をオーストラリアにつれてってください。
Text No.1075 飛田給